在宅療養するためには

より多くの人たちが、病院を退院して住み慣れた自宅で家族と楽しく過ごすにはどうしたらよいか。これは僕たちが日々取り組んでいるテーマである。では、どのような条件がそろえば自宅療養できるのだろうか。

本人が家に帰りたいと希望し、家族が帰らせてあげたいと考えたならば、たとえ重い病気の方でも、療養環境を整えることにより自宅療養は可能だと僕たちは考えている。とはいえ、最初は本人も家族も不安でいっぱいだ。先日も治療の方法がなくなった大腸がんの患者さんが1週間という期限付きで自宅に戻ってこられた。本人が帰りたいと言うので退院してきたが、この先とても家では看られないので1週間したらまた入院してもらいますと奥さんは不安そうに話しておられた。ところが、1週間、2週間と在宅療養は続き、結局3週間目の外来でもう入院はしないと言って入院をキャンセルして帰ってこられた。その後3ヶ月間自宅で自由に過ごし、最期は家族に看取られて穏やかに息を引き取られた。

このように、僕たちが初回往診に行くと、多くの人は、自宅で療養できるのはうれしいが病院のようにいつも医師や看護師がいるわけではないので不安だと思っているし、家族も家で看取るといってもイメージができないと考えている。最初から、この先ずっと家で療養します、病院には二度と行きませんと宣言する人は少数派だ。とりあえず自宅療養して、だめだったらまた再入院というスタンスの人がほとんどだ。多くの人は自宅でどのような医療・介護サービスを受けられるか知らないし、家族の方も親族を看取った経験のない人が大多数であるので、このように考えるのは当然のことである。

なにごとも最初が肝心と言うように、在宅療養も最初の導入期が成否の鍵をにぎっている。そこで、僕たちは訪問看護師やケアマネジャーと密に連絡をとりながら、本人や家族に安心を提供するということを第一目標において活動を開始する。家にいても、医師や看護師にいつでも相談できるということを実感してもらうことが大事だ。また、現在の病状やこれから起こりうることについてわかりやすく説明をする。このような毎日の地道な活動により、「これだったら家で安心して療養できるかも。」「最期まで看てあげられるかも。」という気持ちが芽生えてくる。このような気持ちを大切にしてサポートを続けていくのである。

病院スタッフにおいては、患者の「そろそろ退院して家に帰りたい。」という言葉を耳にしたら、それを見すごさず迅速に退院に向けて動き出すことが重要だ。これを解決してからとか、ここをもう少しよくしてからとか考えていると時期を逸することがある。また、頭からこの人は無理だと決めつけるのもよくない。まずは、連携室と協力して地域のスタッフと連絡を取り早い時期に退院前カンファレンスを開催しよう。退院前カンファレンスは病院スタッフと地域の医療・介護スタッフが情報を共有し今後のよりよい支援策を話し合う重要なイベントだ。ここで退院に向けた新たな課題が出てくることが多いので、それを解決してしっかり準備を整えていよいよ退院ということになる。病院スタッフは、もし困ったことがあったらいつでも帰ってきていいよという言葉で、不安な患者や家族をそっと後押ししてあげてほしい。

日本には在宅医療や介護保険という素晴らしい制度がある。たとえ重い病気があっても本人や家族が希望し、環境を整えることができれば、自宅で過ごすことが可能であるということを、もっと多くの人に知ってもらいたいと思いながら僕たちは日々活動を続けている。

在宅療養するためには」への1件のフィードバック

  1. ブログを拝見して、近くに体験した事、そして、私達家族が、思う事、周りのかたに望むことをそのまま書いて有り、本人の、気持ちに 優しく寄り添って頂けると、改めて感じました。これから宜しくお願いします。

中村 ゆうこ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です